「ゲンダラ」茶園の南側に隣接する場所は、現在、笹林になっていますが、1960年代前半、地域に初めてブルドーザーが入った時に開墾され、種を植え、かつて茶園だった所です。当時、山の木を切り、切り株や芝そして表面の僅かな土だけを、ブルドーザーでおして開墾したそうなので、開墾前と開墾後の地形は、ほとんど変わっていない所です。
今回、この場所に再び種を植える計画をたてましたが、ここの地表面は古琵琶湖層に覆われているため、どのようにすれば古琵琶湖層の地勢を表現できるような茶園環境になるのか、考えながら取組みました。
●スコップで掘ってみたところ、表土(耕土)より下層は、スコップの刃が入らないほど、硬い地盤となっていました。当時はブルドーザーでの開墾だったため、「深耕」という工程は行われていなかったようです。そのため、今回は、茶樹の根が入れるように、深く耕すことが重要であると考えました。
●表層から下層に向けてどのような土があるのか、各地層を観察してみたところ、重粘土、砂や丸いレキ(石)を含むシルト層など、多くの種類の土(鉱物)が重なり合うようになっていました。そこで、各地層から、土(鉱物)を採取してみたところ、粒子の大きさ(粘性度)、手で触った感触、色など、その特徴は様々でした(下の写真)。土の粘性度は保水性や排水性・保肥性、色はミネラルなどに起因するため、表層から下層の各地層それぞれ特徴ある土(鉱物)を、よく混ぜ合わせることで、植物が育ち易いバランスのとれた土壌環境になると考えました。
●月ヶ瀬地区は、1~2億年前の地質(基盤岩類)の上側を、600万年前の古琵琶湖層が覆っているため、深耕の際に不整合面(異なる年代の地質の境目)より下側の基盤岩類まで耕していないことを確認しながら、古琵琶湖層だけを深く耕すことが必要であると考えました。
●そして、古琵琶湖の地層に、しっかりと根が張ることが重要であると考えるため、挿し木苗でなく、種を植えました(茶園を「品種茶園」と「実生茶園」に分類するを参照)。「ごこう実生」「べにひかり実生」
以上、4つのポイントを意識しながら取組むことができました。とくに茶園造成の際は、経験が豊富で、急斜面での重機による土木作業技術が高い地元の業者さんが、当園の主旨を理解して下さることで、進めていくことが出来たと実感しています。
古琵琶湖層群の地層を大型ユンボで「カチ割った」ということは、600万年ぶりに、これらの土が表面に現れたということにもなります。
ここの茶園名は「ゲンダラ3」。「べにひかり実生」と「ごこう実生」を植えました。