日本には、いろいろな茶の品種がありますが、唯一、奈良県で育成された「やまとみどり」という品種があります。しかしながら当茶園では「やまとみどり」の種から増やした実生茶園は「ゲンダラ」「キトロデ」と二か所にありますが、「やまとみどり」挿し木苗で増やした品種茶園は、まだ育てたことがありませんでした。さらに、県内でも「やまとみどり」が植えられている茶園も極めて少ないのが現状です。そこで当園では2016年の春、「やまとみどり」の挿し木苗を植えることにしたのですが、「やまとみどりを植えるのは県内では60年ぶりではないか」と、奈良県の茶研究センターの方が言われてました。
このような状況でありますが、「やまとみどり」魅力を、どのように考えていきたいか、まとめてみました。
まず、「やまとみどり」の特性について、調べて抜粋してみました。
被覆栽培をしなくても、もともと濃緑色のある特性から天然玉露とも言われていた。(奈良県茶業試験場に在籍されていたT先生より)
奈良は、山間地の内陸性気候という立地条件のため、4月になっても晩霜が多発する地域です。そのため、現在では、『「やぶきた」+「防霜扇完備」』というのが、安定した品質の一番茶をつくるために、一般的な光景となっていて、防霜扇がない茶園のほうが珍しいぐらいです。しかし、早晩性からみると『「やまとみどり」は、萌芽期・摘採期ともに「やぶきた」より10日以上遅い品種』と紹介されています。よって「やまとみどり」は、晩霜害を回避できる可能性が高くなるということになります。
さらに「冬季の耐寒性に極強」「裂傷型凍害に極強」ということから、大和高原特有の「厳寒期の低温」かつ「季節の変わり目に起こる急激な気温の変化」にも、強いということになります。
これらの品種の特性から、この「やまとみどり」の魅力の一つとして、奈良という土地の特徴を最も素直に表現することができる品種なのではないかと思います。言い換えれば、奈良における「標準品種」と言えるのではないかと考えます。
いっぽう、 奈良は全国の茶産地の中では、最も遅い時期に一番茶(新茶)を収穫することができる産地です。しかしながら、遅場産地の奈良であっても、新茶の出荷を全国の市場の出荷時期に合わせなければいけないという前提があるのであれば、県内で「やまとみどり」がほとんど植えられていないことにも納得できます。仮に、そのような「新茶の出荷時期を早くしなければいけない」という前提条件の必要性がなく、奈良の土俵で新茶をつくって出荷出来るのであれば、奈良でもっと「やまとみどり」が植えられていたのではないかと思います。
今後、奈良の標準種「やまとみどり」を育てていく際、当園では、次のようなことを意識して取り組んでいく予定です。
●例えば「やまとみどり」と比較して、日本の指標品種である「やぶきた」の特徴を考える際、
『「やまとみどり」は、「やぶきた」より10日以上遅い品種』と考えるのではなく、
『「やぶきた」は、「やまとみどり」より10日以上早い品種』と意識して取り組んでいく。
●この土地で、無理なく育つことができる「やまとみどり」を自然栽培することで、奈良ならではの産地の特徴を学ぶ。
●「やまとみどり」の挿し木苗から増やした「やまとみどり品種茶(宮山)」と、「やまとみどり」の種で増やした「やまとみどり実生茶(ゲンダラ、キトロデ)」を比較して、品種茶と実生茶のそれぞれの特徴を学ぶ。
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奈良でお茶の栽培を営んでいるからこそ、少しの面積であっても、「やまとみどり」をつくることに魅力を感じます。
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