当園の茶園が点在する地域内の地表面は、二等分するかのように「恐竜が全盛期だったとされる1~2億年前の地質」と「人類が現れ始めた頃とされる500~600万年前の地質」の境目(不整合面)となっています。そのため「恐竜が全盛期だったとされる1~2億年前の地質に根が張って茶樹が育つ茶園」と「人類が現れ始めた頃とされる500~600万年前の地質に根が張って茶樹が育つ茶園」、そして「両方の地質が混ざりあった地質に根が張って茶樹が育つ茶園」があり、地域内で地質年代が全く異なる地層でお茶をつくっているということになります。
さらに山間の茶園では浸食、盆地に繋がる標高が低い茶園では堆積によって複雑な地層となっていることから、点在する茶園ごとに茶樹の育ち方が異なり、いろいろな特徴をもつお茶をつくることができる茶園環境であるということが少しずつ分かってきました。
この、恐竜が全盛期だったとされる1~2億年前の地質は領家帯と呼ばれ、本州が最初の造山運動にあった時代、その中心地帯でつくられたとされる日本列島の背骨的な地質となり、月ヶ瀬地域の基盤岩類となっています。いっぽう人類が現れ始めた頃とされる500~600万年前の地質は古琵琶湖層群と呼ばれ、領家帯(基盤岩類)を覆うように地域内の地表面に、年代の異なる地質の境目となる不整合面が続いています。
今春、新たに種を植えた「ハチドダ2」茶園は、そんな地域の地質構造を象徴するかのように、地表面が異なる年代の地質の境目(不整合面)となっている茶山です。同じ茶園内でも、南東向き尾根沿いの表土は人類が現れ始めた頃とされる500~600万年前の地質「古琵琶湖層群」となっているのに対し、南向き斜面の表土は恐竜が全盛期だった頃とされる1~2億年前の地質「領家帯」となっています。
この茶山には、4つの区画があり、「べにひかり実生」「そうふう実生」「さえみどり実生」を植えました。「べにひかり実生」は、地質の違いを比較したいため、2区画分に植えました。地形は変えていませんが、表土をカチ割って耕した地質の中に、しっかりと茶樹の根が張ることで、異なる年代の地質の違いを「べにひかり実生」で表現することが出来るかも知れません。
参考文献:名勝月ヶ瀬 学術調査報告。奈良県月瀬村名勝月瀬編集委員会発行。