昔は新たに茶樹を増やす場合、在来種から種を採り、さらに在来種を増やしていくのが一般的な方法でしたが、奈良・月ヶ瀬では1950年代以降、静岡より「やぶきた品種」が導入されてからは挿し木で増殖していくのが一般的な方法となりました。このように1950年代以降、在来茶園は品種茶園に植え替えられていった結果、今では、ほとんどが挿し木で増殖された品種茶園となりました。
そういった中で、これからの時代、奈良・月ヶ瀬ならではのお茶づくりを意識して取組もう考えたとき、この地域の風土に適応しながら昔から育ち続けてきた在来種から、本来、学ぶべきことがたくさんあるのではないかと思うようになりました。その在来種とは、静岡から「やぶきた品種」が導入された頃より以前の時代に、在来種からの採種によってつくられた在来茶園ということになります。因みに、挿し木で増殖する場合は母樹の特徴がコピーされるように引継がれていきますが、種で増殖する場合は母樹と花粉親によって個々それぞれの特徴に形成されていきます。よって、1950年代以降になると、在来茶園の周辺では「やぶきた」等の品種茶の花粉が飛んでいる可能性があるので、もはや、生粋の在来種を増やしたくでも増やせない時代になってしまったということになります。
当園では、ホリコシ峠1,ゲンダラ2、切下1などの在来茶園の他、今冬は、ホリコシ峠2茶園でも再生して栽培を開始しました。樹齢は短くても70年以上となる生粋の在来茶園を継続していくことで、奈良・月ヶ瀬ならではのお茶づくりを深めていきたいです。(2022年2月)