月ヶ瀬健康茶園

文明語る

紅茶班通信No.1(2006年8月)

緑茶用品種でつくる紅茶のこと

緑茶用品種の新芽からの紅茶製造を始めて今年で6年目。「春摘み」は爽快な甘味ある紅茶に、「夏摘み」は発酵による甘味のある紅茶に、そして「春摘み」「夏摘み」ともに渋みのない和風味が持ち味になるよう今後も取組み続けます。

紅茶用品種でつくる紅茶のこと

今年の5月は、3年前に植えた紅茶用品種「べにふうき」「べにひかり」「べにほまれ」の幼木から、何とか機械に最小限入る初めてのほんの少しの収穫量がありました。幼木から収穫する新芽は大小不揃いだったため新芽を均一に萎らせる萎凋工程でたいへん苦労しましたが、鼻に抜けるような香りの深さ、発酵が強いこと等に驚きばかりでした。生長して成園になってくれば芽揃いの良い新芽が収穫できるようになるため、製造工程でも均一に新芽を萎らせる事が出来るようになり、紅茶の品質が安定して良くなっていくと思います。

続けて7月に二回目に収穫する予定だった紅茶品種の新芽は、初期の段階でウンカ(チャノミドリヒメヨコバイ)という害虫に食害されてしまい、全く収穫できませんでした。とても残念でした(写真)。ですが、もし仮に茶刈機で刈取りできる程にまで生長していた新芽がウンカに食害されていたならば、少量ながら最高の紅茶が出来ていたはずでした。ここでウンカについて少しお話させて頂きますと、通常6~8月頃に発生するウンカという害虫に食害された新芽は虫食いとなり生長も止まり商品価値がなくなります。これまでも我が家では無農薬栽培の中で、ウンカの被害に遭う事は多々あり、その度に無農薬のデメリットを強く感じていました。しかし昨年参加した台湾研修で、ウンカに食害された新芽でお茶をつくると熟果香あるいは蜜香と呼ばれる非常に良い風味がでるために、珍重されている事を学びました。そしてウンカの唾液と茶葉の酵素が反応して良い香りが発揚するという科学的根拠もあり、ウンカが食害した新芽だけでつくる東方美人という台湾の有名なお茶もある事を学びました。

無農薬栽培の中でデメリットだったウンカ被害ですが、万が一、被害に遭った場合は無農薬栽培だからこそのメリットとして発想転換し、出来るだけ活かしたいと考えています。

今後のこと

今年は寒くなる頃に、少しの量ですが初めて紅茶品種で作った紅茶をご案内させて頂きたく思います。

来年以降、紅茶品種の収穫量は生長するに従って倍増していく予定です。紅茶品種は、それぞれの品種毎に特徴がはっきり異なる事が分ったので、品種別に商品アイテムをつくるべきではないかと考えています。新しく出来きる3品種の紅茶を、どのように企画していくべきか、よく検討する時期となってきました。

 

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 紅茶の製造で最も重要な萎凋(いちょう=萎らせる)工程で、適度に萎凋した新芽。この状態になった新芽は、先芽が白くなり「ゴールデンチップ、白毛」等と呼ばれる。また茎に縦じまが現れ、リンゴのような爽快な香りし、皮手袋のような手触りになる。萎凋した新芽は揉み易い状態になり、次の揉捻工程へと進める。

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ウンカの被害で生長が止まってしまった紅茶品種の新芽。2006年7月 井口山圃場にて。

2006年8月  月ヶ瀬健康茶園 岩田文明