新年おめでとうございます。第3号です。5年前から育てている紅茶品種の新たな取り組みの中で、07年4月の第2号紅茶班通信では、手摘みのような少量の茶葉でも紅茶製造が出来るように小さな機械を購入して設置した事、そしてオーデナルティ(日常に飲むお茶)「機械刈り」と、スペシャルティー(特別な時に飲むお茶)「手摘み」を作っていきたい事をお知らせしておりました。
その後、07年の収穫期に紅茶品種の試作を繰り返すなかで、手摘みや機械摘み、そしてウンカ被害に遭った芽(第1号紅茶班通信参照下さい)からも、少しずつ紅茶が出来てきました。まだ製造方針を決めた生産方法でもなく、しかも生産量が少ないために少量規格ですが、紅茶品種としての特徴が感じられる紅茶が出来始めています。改めてご案内させて頂きます。
紅茶畑のこと
紅茶品種の茶園では06年同様、7月~9月頃までは芽が出ても生育途中で害虫(とくにウンカ)の被害に遭ってしまい、ほとんど収穫できない状態が続きました。まだまだ幼木で芽数が少ないため、害虫被害を受けやすいように感じます。農薬を使わない栽培では、涼しい時期に新芽が生育する5月のファーストフラッシュと、9~10月のオータムナルで、ある程度安定した品質と収穫量を維持していますが、害虫が発生しやすい夏季は収穫が皆無といえるほどです。さらに近年は残暑が続き、秋が短くなっていると感じます。害虫被害が少なくなる本来の9月頃のような気候が短くなっている状況は、たいへんなことです。
紅茶特別研修会のこと
7月に、日本紅茶協会が主催する紅茶特別研修を神戸で一泊二日で受講してきました。印象に残ったことは、「世界にはダージリンやウバ、キーマンといった銘産地があるが、銘茶とは生産量の多さではなく、特徴があるということ」と聞いたことです。とくにダージリン紅茶には、多くのヒントがあるような気がしますが、日本産紅茶を創っていく中では外国の紅茶の真似をする必要はなく、日本の特徴とは何かを追究していきたいと思いました。
紅茶用品種でつくる紅茶のこと
07年の製造を終え、今後もオーデナルティ(日常に飲むお茶)「機械刈り~人工萎凋・・・」とスペシャルティー(特別な時に飲むお茶)「手摘み~自然萎凋・・・」、それぞれを作り続ける事が必要であると感じました。07年は、紅茶品種「べにふうき」の茶園でイベントを兼ねて春の新芽を手摘み、紅茶製造しました。08年は、どの時期の新芽を手で摘み、紅茶製造をすれば良いかが課題です。
緑茶用品種でつくる紅茶のこと
5月の春摘み紅茶製造の際、06年までは発酵室の温度を25~30℃で発酵を進めてきましたが、07年は製造室の建て増しや機械の追加などで発酵室の温度が20~25℃となっていました。そのため07年産春摘みは、発酵がやや弱めの紅茶となってしまいました。春摘みの特徴として考えれば問題はないのですが、私自身、発酵を強くしてスーっと鼻に抜けるような甘い香気の紅茶を作りたいので、08年製造までに発酵室の温度(湿度)管理を出来る様にしたいです。また07年7月産の夏摘みからは製造工程の中で篩いを導入したため、より安定した発酵を進めることが出来ました。夏摘み紅茶の香気がやや良くなったのではないかと思います。
さらに08年の製造では、茶葉をみるだけでも美味しそうに感じてくるような紅茶にしてみたいです。それはダージリン紅茶のファーストフラッシュやセカンドフラッシュには緑や茶色の茶葉がチラチラと含んでいることがあり、視覚という観点からも飲みたくなるような気持ちにさせてくれるような気がします。ムーンロックの春摘みと夏摘みでも、それらの特徴の違いを出すためにも、製造工程のなかでもう少し大胆に取り組んでもよいのではないかと思います。
2008年1月 月ヶ瀬健康茶園 岩田文明