第7号です。間もなく2012年の一番摘み紅茶の収穫と製茶を始める頃となりました。
これまで取り組んできたことと、今年の新たな取り組み
2001年から初めて取り組んだ紅茶づくりですが、これまで11年間、施肥方法を改良したり、手づくりの茶小屋で、機械を交換したり、改造したりして、毎年品質を向上させようと取り組んだ結果、毎年、変化のある紅茶になっていたのが現状でした。これまでの傾向と、2012年に新たに取り組むことをまとめました。
栽培・製造で新たに取組んだこと |
取り組んだことが原因で製品に変化・特徴が見られたこと |
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2002年 | 紅茶専用揉捻機で初めて揉む | 香味が紅茶らしくなる | |
2008年以降 | 揉んだ後の葉を篩で大小に分ける | 発酵が出来ていない品質を低下させている部分が大幅に減少する。 | |
2010年以降 | 夏摘みの収穫前の肥料をやめる | 夏摘み紅茶が、すっきりとした香りになり始める。 | |
2007~2010年 | 発酵を促進しようと強く揉む | 発酵度は高く味も濃く出るが、爽やかさに欠ける傾向になる。味が強い分、雑味も感じやすい特徴があった。 | |
2011年 | 茶葉の揉みを弱くする | 爽やかで雑味も少ないが、成分が湯に煎出されにくく色と味がやや薄い傾向にあった。 | |
新たに取り組むこと | 新たに改善できると予想していること | ||
2012年 | 揉捻(じゅうねん)と発酵 | 発酵は、揉む工程から始まるため、揉捻・発酵をする両方の部屋の温度を一定にすることで、安定した発酵ができるよう取り組む。これまでは、発酵をする部屋だけ、温度管理ができるようになっていました。 | |
揉捻(じゅうねん)と篩(ふる)い | 揉捻と篩の関係を利用し、新芽の部位(芽、葉の大きさ)に適した製造を進める。新芽の柔らかい部位は、「爽やかさ」を引き出すため弱く揉み、発酵を浅めにする。成熟気味の葉は、「発酵」の風味を引き出すため強く揉み、発酵を進める。爽やかさと発酵の風味のバランスがとれた紅茶になるよう改善する。 | ||
乾燥 | 乾燥工程を増やし、新たな乾燥機で乾燥温度を工夫することで、雑味(青臭み)を軽減し、香気を引き立てられるよう改善する。 |
アミノ酸成分と腐敗
紅茶づくりをして気づいたことがあります。アミノ酸(旨味成分)の多い新芽は紅茶の製造に適さないことです。緑茶の場合は窒素成分の多い肥料をあげて、アミノ酸の含有量の多い新芽をつくることで、旨味のある緑茶ができます。紅茶をつくる時、最初、萎らせる(萎凋(いちょう))重要な工程があります。ここで良い香りを発揚させることが香りの良い紅茶づくりに繋がるのですが、アミノ酸の多い新芽で紅茶をつくると良い香りが出ないどころか、その後の製造中に腐敗臭がしてきます。緑茶の場合は収穫してすぐに蒸して製茶していくので腐敗臭には気づきませんが、紅茶の場合は収穫してから20時間以上萎らせたり揉んだり発酵させたりしますので、その間に腐敗しないことが大切になります。野菜でも、保存中にズルけて腐敗するものと、ミイラのようになっても腐敗していないものがあります。野菜で例えると、萎れてミイラのようになっても腐敗しないような茶の新芽を栽培することが紅茶では大切になってくると考えています。紅茶の場合は、緑茶と反対の栽培技術が必要になることになります。紅茶をつくり始めてから、新芽の純粋な風味を活かすには、緑茶も紅茶も栽培において窒素の肥料分を極力少なくしていく必要があることを感じています。
2012年5月 月ヶ瀬健康茶園 岩田文明