今年は、2月~4月前半まで雨降りの日が多く、この期間、過去5年平均の2倍以上の雨量があり、茶園では、例年と比較して土が湿った状態で萌芽期(4月前半)を迎えました。このような状況で一番茶が生育すると、どのような傾向の新芽が育ち、どのような特徴を持ったお茶になるのか、興味を持ちながら今年の新茶シーズンを迎えました。
その結果、例年と比較して、今年の新芽は良く伸びて(節間が長め)、葉が薄く、芽に含まれる水分量が多いといった傾向がありました。
収穫は、5月2日に早生品種「さえみどり」から始まり、5月30日に極晩生種の「べにひかり実生」を最後に終えました。今年の新芽は良く伸びる特性があったので、育ちすぎて収穫適期のタイミングを逃してしまわないことが重要なポイントだったのですが、収穫期間中、天候に恵まれた日が多く、各品種ごと茶園ごとに適期に収穫を進めていくことができました。
煎茶に製茶してみると、滋味に強さがあり、滋味から全体の特徴を感じられるような美味しさのあるお茶に仕上がったと感じます。
紅茶に製茶してみると、例年より発酵がよく進む傾向があり、やや発酵型の紅茶になるように照準を合わせて作りました。全体的に滋味に香気が入ったような美味しさのある紅茶に仕上がったと感じます(紅茶は、一定期間、熟成してからの出荷となります)。
当園では、奈良・月ヶ瀬の自然のリズムを意識した自然栽培・有機栽培のお茶づくりに取組み続けることで、その年ならではの傾向を素直に表現できるのではないかと考えています。近年は例年通りの気候とはならない場面が増え、こういった傾向は、年々顕著になっています。自然環境そのもの、更にその年ならではの気候で育った特性を、お茶を通じて、お伝えしていきたいと思っています。(岩田文明)