月ヶ瀬健康茶園

文明語る

手摘みでの少量生産から学んだ機械収穫の紅茶づくり

機械収穫の紅茶と手摘みの紅茶を比較する

2001年から開始した紅茶づくりでしたが、茶刈機で収穫した茶葉を製茶できる規模で試行錯誤しながら進めるなか、品質をとことん追究した紅茶も作りたくて、2010年からは手摘みでの少量生産の紅茶づくりも始めました。機械収穫の紅茶は「日常の紅茶」、手摘み紅茶は「特別な紅茶」として、手摘みの生産量は機械収穫の1%未満の割合でした。これらを平行して作り続けることで、機械収穫の紅茶の品質を、手摘み紅茶に近づけていきたいと考えました。

2010年以降、このようなスタイルでの紅茶づくりを続ける中で、機械収穫に対して、手摘みの品質が極めて良かった理由は、当初、手摘みだから新芽の芽揃いが揃っていることに大きな要因があると思っていました。しかし双方を比較するうちに、手摘みの方が発酵止め(殺青)の精度が遥かに高く、機械収穫の方は発酵止め再乾機の中で発酵が進みながら熱が加わっていたことも大きな要因であることが分かってきました。

 

殺青(発酵止め)工程を改善することの必要性

どのようなお茶づくりをする時でも殺青は要の工程であるため、2018年、機械収穫での殺青(発酵止め)工程の改善に取組みました。しかしながら、まとまった量の発酵茶葉を狙ったタイミングで殺青できるよう大型機械の構造を改造することは難しく、年数を費やしました。具体的には、茶葉が殺青できる(発酵が止まる)ための熱風温度、風量、時間、投入量、茶葉へ熱風の当たり方等の項目で試行錯誤を繰返し、2023年産、ようやく熱交換によって茶葉が上手く殺青できるポイントが見つかり始めました。

今後の機械収穫での紅茶づくり

紅茶製造の際、発酵工程で、最も香気が良いタイミングで発酵を止めること(殺青)が大切なポイントの一つになるのですが、ようやく機械収穫で製茶した日常の紅茶でも、その時の良い香りをピュアに感じて頂けるような紅茶になってきました。さらに品種毎の異なる特徴や冷涼地ならではの爽やかで繊細な美味しさを感じて頂ける紅茶になるよう、発酵止め乾燥機の微調整、萎凋した新芽の水分量の制御等を行いながら、ロット毎の最適化を図っていきたいと思います。

今後の手摘みでの紅茶づくり

茶園にウンカが飛来して新芽が食害を受けることで、蜜香または熟果香と呼ばれるような高貴な香気が発揚します。そういった新芽は茶刈機で収穫しようとしても、刈刃にかからないほど節間が短くて小さいので、手摘みならではの特別な紅茶をつくっていきたいと考えています。

また2017年より、品種毎に分けて種子親から種を採り植えてきた実生茶園が育ってきており、品質の高いクオリティーシーズンに少量ずつの生産する等、様々な傾向を探っていきたいと予定しています。