第4号です。第3号でお伝えしていた事ですが、昨年度、紅茶品種で少しだけ製造した「べにふうき紅茶」の販売の案内が遅れてしまっておりお詫びいたします。
紅茶製造を始めて(家業を継いで)、8回目となるシーズンを前に、今年の収穫や製造のイメージを膨らませている今日この頃です。
最近思うこと
我が家では「栽培から加工・袋詰めまで一貫したお茶づくり」という表現をしていますが、最近、「すべての作業(工程)で、一貫した気持ちをつないでいけること」がとても大切だとつくづく感じています。我が家には、25年前からの「農薬も化学肥料も使わない有機栽培のお茶づくり」という主題があります。この主題を継続・向上したいという強い気持ちがあるからこそ、茶園での栽培~荒茶(一次)加工~二次加工など、お茶が出来上がるまでのすべて工程の中で様々な工夫や試作があり、技術が生まれ、また選択肢も決まっていきます。人の生き方も似ているのではないかと思います。「数年後の私」、「10年後の私」・・・の夢が想像できれば、そのために一貫した努力を続けて、少しずつ夢に近づいていけるのではないかと思います。
「紅茶づくり」というテーマも、夢に向けて、いろんな観点から試行錯誤しています。
紅茶畑のこと
紅茶品種「べにほまれ」「べにふうき」の生育に適さない圃場の茶株を、暖かい南東向き圃場に移植しました
昨年、開墾した茶園(コクダシ3圃場)に植えた「べにふうき」が裂傷型凍害(茶の木が冬支度できていない晩秋頃、急な冷え込みが来た場合、幹が凍って割れてしまう被害。紅茶班通信№2参照下さい)に遭ってしまいました。凍害対策はしていたのに凍害に遭ったため、「この場所は紅茶品種 べにふうき には適さない」と判断し、ワラを除けてから被害に遭わなかった苗木だけ掘り起こし、新たな別の茶園(南東向き斜面の暖かい場所=長引・宮山圃場)に移植しました。コクダシ3圃場は粘質土壌で水分が多いこと、冷気が溜まりやすい、といった要因で凍害に遭ったのではないかと考えています。移植後は、コクダシ3圃場に寒さに強い緑茶品種「おくみどり」を新たに植えました。
また、3年前に植えた「べにほまれ」も毎年、裂傷型凍害に遭っていた区画があり、思い切って同じく暖かい南東向き斜面の茶園(長引・宮山圃場)に移植しました。定植して3年も経てば、幹周りが直径1~2cm程の太さにまで生長しています。何百株も掘っていると、根の張り方に同じ特徴がありました。それは手のひらをパーにして机の上に置いた時のように、ほとんどの根は横に広がっていました。「挿し木」で増やした苗は地上部も地下部の根も元々は茶の木の枝であるため、たとえ根であっても「枝」という性質から下へ伸びようとせず横か上に伸びる習性があります。そんな根の張り方を観察する事ができました。
ちなみに、「挿し木」で苗をつくることで、親の品種をそのままコピーすることができます。いっぽう、実(種)で苗をつくった場合、直根といって真っ直ぐに下に根が伸びる習性がありますが、親の品種とは異なる特徴に変わってしまうため、現在では「挿し木」が一般的です。
緑茶用品種でつくる紅茶、紅茶製造のこと
5月の春摘み紅茶ついて、07年産春摘みは、発酵がやや弱めの紅茶となってしまいましたが、本来は発酵を強くしてスーっと鼻に抜けるような甘い香気の紅茶を作りたいと考えています。そこで今春は均一に茶葉が発酵できるよう大小篩分けと、安定した発酵を進めるため温度(湿度)管理ができる専用の発酵室をつくりました。
今季は、緑茶品種の特徴を活かした紅茶作りをさらに進めるとともに、新たな紅茶品種での(機械刈りした新芽での)紅茶製造の感触を初めて体感できる年となりそうです。
2008年4月 月ヶ瀬健康茶園 岩田文明