茶園は、地域全体の自然環境の一部を担っている大切な環境であると考えています。よって、当園では茶園だけをみて管理するのではなく、地域の自然環境そのものがお茶を育ててくれるよう意識したお茶づくりに取組んでいます。
地域に点在する各茶園は、歴史や成立ちが異なることから、茶園を、「茶山」と「茶畑」、そして「中間」に分類して、それぞれに適した方針で管理を行っています。茶山では無施肥による自然栽培、茶畑と中間では地域循環を主体とした有機栽培でのお茶づくりをしています。
「茶山」とは、もともと自然の樹木が育っていた土壌に茶樹を植えているので、茶樹が樹木として育つことができる茶園環境です。人間にとっては作業が困難な環境ですが、昔ながらの自然の地形や地勢が茶樹を樹木として育ててくれます。
「茶畑」とは大型重機で山を切り開いて造成された茶園で、人間にとって作業効率が良い茶園環境です。自然と有機農業の営みの調和によって茶樹が育つことができると考えています。
「中間」とは、茶山と茶畑の中間型です。
当茶園では、地域に育つ自然の草木を「まるごと」茶園に還し、茶樹に施す有機物が「地産地消」「身土不二」「一物一体」であることを追究したお茶づくりに取組んでいます。
過去に魚粕と米麹の有機肥料それぞれで試験的に栽培して飲み比べたことがあります。その結果、魚粕肥料で栽培したお茶はダシのような旨味のある風味があり、米麹肥料で栽培したお茶は炭水化物のような甘味のあるお茶ができました。これらのことから無機的な要素だけでなく施す有機物が何かによってお茶の風味が異なることがはっきりとしました。これは有機物を施す農業の魅力でもあり、また施す有機物を何にするのかをしっかり厳選していくことの重要性を考えさせてくれました。
これらの経緯から、近隣に育つ自然の草木を「まるごと」茶園に還すことが、地域ならではの純粋な風味あるお茶づくりに大切なことであると学びました。具体的にはススキや笹などの草、落ち葉、落葉広葉樹林の枝チップ、椎茸原木の腐植を地域内循環しています。
近年、月ヶ瀬地域では耕作されなくなった田畑(耕作放棄地)が増え、茶園の周囲あちこちで旺盛な笹の茂みが広がってきています。このような人が入ることができない茂みはイノシシの住処となり獣害が増える一因となっていると同時に、陽当りが悪くなるなど農業の営みにも大きな支障をきたしています。
当茶園では、このような笹ジャングルを、茶園に施すための草を育てる畑として活用したく、毎年ジャングルを開拓し、草を刈り続け、地域の自然がお茶を育てる環境づくりを進めていきます。2015年12月現在、約7haの茶園に対して約3haの採草地があります。
今後もお茶づくりの営みが、地域に多面的・公益的・相乗効果的な役割を果たしていけるような取組みを進めていきます。